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「いろいろなカビ毒 オクラトキシンA について

カビ毒については、有害物質として検査を行っています。この度、食品衛生関係雑誌にカビ毒に関する情報提供があったので概要をまとめました。

 オクラトキシンA(OTA)は1960年代に南アフリカで穀類から分離されたカビ毒です。アスペルギルス属(Aspergillus’ コウジカビ)およびペニシリウム属(Penicillium’アオカビ)の一部のカビが産生し、穀類、豆類、乾燥果実、飲料など多様な食品から検出されます。 
 肝臓や播臓に毒性があり、北欧諸国の豚の腎障害やバルカン諸国でのヒトの腎疾患と関連する可能性があります。動物試験では腎毒性および発がん性が確認されています。 
 
海外における基準 
 国際的には、JECFAは2007年に豚の腎毒性を指標に、暫定最大耐容週間摂取量(PMTWI)を0.1㎍/kg体重としています。 
規格基準については、コーデツクス委員会が小麦、大麦およびライ麦について5μg/kgの基準を設定しています。 
 
日本における基準の設定 
 日本では現時点ではOTAの基準はありませんが、基準を設定する作業が進行中です。 
 
食品安全委員会による自ら評価 
 2014年に食品安全委員会が自ら評価を行い、非発がん毒性については耐容摂取量を16ng/kg体重/日、発がん性については非遺伝毒性発がん物質であると判断して耐容摂取量を15ng/kg体重/日と設定しました。 
 週あたりに換算するとJECFAの設定した値と同程度です。そして食品安全委員会は、日本人の食品からの摂取量を推定して平均で0・14ng/kg体重/日、摂取が多い層でも2.2lng/kg体重/日だったため、現状では日本人の健康に悪影響を及ぼす可能性は低いものの、OTAの汚染の程度が大きく変動する可能性もあるためモニタリングと規格基準の検討が望ましいと評価しました。 
 OTAを産生する菌が多種多様な農作物や食品で生育する可能性があり、気候条件等によってカビ毒の濃度が変わるからです。そこは、ほぼりんごだけ心配すればいいパツリンとは違います。 
 
評価を受けた行政の動き 
 この評価を受けて農林水産省は消費量の多いコメや小麦のOTAを複数年継続して調査し、すべて0.3㎍/kg未満だったことを報告しています。 
 その後、厚生労働省の食品規格部会が2023年12月に小麦と大麦にそれぞれ基準値「5μg/kg」を設定する提案をし、2024年2月に食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼しています。 
 食品安全委員会は、かび毒・自然毒等専門調査会においてオクラトキシンAに係る食品健康影響評価を審議中で、審議が終われば消費者庁の食品衛生基準審議会に回答することになります。 
 
 食品安全委員会の自ら評価で規格基準の検討が望ましい、と結論してから10年以上かけて調査や検討をしてきたわけです。もちろん、最初の評価で「健康リスクがあるため早急に対策すべきである」といった結論だったらもっと迅速に対応されますが、リスク評価の結果を受けてどのようなリスク管理方法が最適なのかを検討するには、実際の流通状況や対応可能性などを調べる必要があるので、ある程度の時間はかかります。食品添加物や農薬のように、認可申請時に使用方法がわかつているものより、行政のやるべきことは多い わけです。その分、人員や予算も多く配置してほしいところですが、なかなかそうはなっていないのが現状です。 
 

畝山 智香子(うねやま ちかこ)  
薬学博士。東北大学薬学部卒。国立衛生試験所安全性生物試験研究センター病理部を経て、前。国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長。  
現在、(公社)日本食品衛生協会学術顧問。  
出典 食と健康 2026.2 (公社)日本食品衛生協会  

【本件に関するお問い合わせ先】
一般社団法人埼玉県食品衛生協会検査センター
電話番号 048-649-5331