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食品等事業者の検便について

食品等事業者が行わなければならない検便についてまとめてみました。

検便に係る経緯について
検便は、HACCPに基づく衛生管理制度が導入されたことから、各都道府県が検便を規定していた管理運営基準は廃止されました。 
そのため、各自治体が定めていた管理運営基準に代えて食品衛生法施行規則に新たな規定が設けられました。この規定に基づき食品営業者は自ら作成した衛生管理計画に基づき検便や自主検査など衛生管理を行うことが義務付けられました。   令和3年6月1日の改正内容へGo

食品衛生法における扱い
食品衛生法施行規則においては、「食品等取扱者の健康診断は、食品衛生上の危害の発生の防止に必要な健康状態の把握を目的として行うこと」とあり、「都道府県知事等から食品等取扱者について検便を受けるべき旨の指示があったときには、食品等取扱者に検便を受けるよう指示すること」とされています。 
この指示について、埼玉県では、「感染症対策要綱」に基づき「保健所長の指示」により食品等事業者は定期的に検便を実施することが定められています。定期的に検便を実施することを定めたこの要綱に基づき検便は実施されています。 

 埼玉県の旧食品衛生法施行細則に規定されていた管理運営基準(国が示した準則通りに作られたもの。営業者が守らなければならない衛生に関する基準)に、検便についての同様の記述がありました。 
 なお、食中毒が疑われる事例で、保健所が検便の実施を指示することがあります。しかし、これは「保健所が指示する検便の実施」ではなく、行政調査権の発動であり、食品等事業者が通常行うべき一般的衛生管理における「都道府県知事等から食品等取扱者について検便を受けるべき旨の指示」ではありませので、誤解のないようにお願いします。 

1.検便の必要性

(1)健康保菌者の有無の確認 
健康保菌者とは食中毒菌に感染していても全く症状を示さない人を指します。 
この存在は、昨今のコロナ禍における報道等で世間に広く浸透しました。 
健康保菌者は食中毒菌に感染しているため、糞便と共に食中毒菌を排出しています。そのため健康保菌者が食材を取り扱うと食材や料理に食中毒を付着させ、食中毒発生に繋がる可能性が高くなります。また症状を有する保菌者に比べ、自身の健康状態に影響がないため、自覚せずに感染を広めることで、より被害が拡大してしまう傾向があります。 
そこで、こうした健康保菌者が調理従事者に含まれていないか確認するために、定期的に検便を実施する必要があります。  
昔と違い、現代は、国民の栄養状態が、改善され、病原菌に感染していても症状がでない健康保菌者が増えています。しかし、健康に問題が無いと過信してしまうと、手洗いなどへの意識が低下したり、衛生管理への注意力が散漫になった場合に危険となります。その方が、触れたり調理した食品で、菌が増殖した場合は、食中毒などの重大な健康被害を発性させることになります。現代社会では、従来に増して健康保菌者への注意を払うことが重要となっています。

(2)食中毒発生時や食品の苦情に対する安全証明 
食中毒事故の原因究明の過程で、食品等事業者として検便を定期的に実施し、その記録を即座に提示することで、事故発生時に従業員が感染していなかったことを客観的に示し、従業員や店舗を守る防衛手段となります。もし検便を行っておらず、記録を提示することができなければ、店舗の衛生管理体制のみならず企業・団体の責任が問われます。こうした意味で検便が果たす役割は大変重要です。 
一般社団法人埼玉県食品衛生協会では、埼玉県の指導のもと「衛生管理ノート」を作成し協会員に販売しています。検便の成績書が無くても検便の記録(いつどこで検便を実施したか等)でき、埼玉県が認める公的な証明にもなります。

なぜ、検便の実施を定めていた都道府県の管理運営基準や様々な基準や通知がが廃止されたのか?

 食品の製造・加工が多様化し従来の食品分類では一様に扱うことができなくなったことなどから従来許可制であった業種を見直し届け出制に変更し、また、新たな許可業種が設定されました。また、食品分類や業種毎に定めていた管理基準や衛生規範などとの整合性が保てなくなってきたことから、それらが全て廃止されました。 
 そのため、新たに国が示した大筋の項目について各団体等が「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理手引書」として作成しそれを確認することで基準に代えることとなりました。 
 この基準は、基本的に2つに分かれており、一般的衛生管理に関する部分と食品等の調理・製造・加工等に関する危害分析を行い特に管理を集中する項目とその管理方法を規定するものです。 
 検便は、言うまでもなく一般的衛生管理のための重要な要素であることから、食品衛生法施行規則の本文中にはでできませんが、よく見ていただくと別表の基準として検便の実施について規定されています。また、業界がモデルとして示す多くの手引書でその実施が明記されています。 検便を実施しなくて良くなったわけではありません。

2.検便はどのように規定されているのか

検便の実施は、法的な基準に示されているだけではなく、多くの手引書や関係の法令、マニュアルなどに規定されています。

(1)「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」に規定されている検便
業界団体が策定し、厚生労働省が内容を確認した手引書に「検便」が規定されています。

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」のとおり行わないといけないのか?

IV. 保健所による監視指導や罰則等について
  (HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化に関するQ&A) より
  平 成 3 0 年 8 月 3 1 日 作 成(最 終 改正 : 令和 3年 5 月 31 日 )
問 15 「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」は、どの程度できていればよいのですか。 
答 15 
1 保健所の食品衛生監視員による「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」の対象となる事業者への監視指導は、業界団体が策定し、厚生労働省が内容を確認した手引書を基に行っています。 
2 従って、食品等事業者の方は、まずは手引書の内容をそのまま実施する、又は手引き書の内容を参考に衛生管理計画を作成して実施するなどして、HACCP の考え方を取り入れた衛生管理を実施して下さい。  

「法第50条の2第2項の規定に基づき公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守している」とは?
小規模な営業者等が実施すること

 小規模営業者等は、業界団体が作成し、厚生労働省が内容を確認した手引書を参考にして以下の1~6の内容を実施していれば、法第50条の2第2項の規定に基づき、「営業者は厚生労働省令に定められた基準(一般衛生管理の基準とHACCPに沿った衛生管理の基準)に従い、公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守している」と見なします。 
1.手引書の解説を読み、自分の業種・業態では、何が危害要因となるかを理解し、 
2.手引書のひな形を利用して、衛生管理計画と(必要に応じて)手順書を準備し、 
3.その内容を従業員に周知し、 
4.手引書の記録様式を利用して、衛生管理の実施状況を記録し、 
5.手引書で推奨された期間、記録を保存し、 
6.記録等を定期的に振り返り、必要に応じて衛生管理計画や手順書の内容を見直す 
 (厚生労働省ホームページ「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」小規模な営業者等が実施すること ) より

(2)大量調理施設(社員食堂などの集団給食施設等)における調理従事者の検便 
「大量調理施設衛生管理マニュアル」 
・調理従事者等に月1回以上の検便を受けること  
・検便検査には腸管出血大腸菌の検査を含めること 
・必要に応じ10月から3月にはノロウイルス検査を含める事が望ましい 

(3)学校給食従事者 の検便
「学校給食衛生管理基準」 
・検便は、赤痢菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌血清型O157、その他必要な細菌等について、毎月2回以上実施すること  

(3)水道関連事業者 の検便
水道法施行規則(昭和三十二年厚生省令第四十五号) 
(健康診断) 
第十六条 法第二十一条第一項の規定により行う定期の健康診断は、おおむね六箇月ごとに、病原体がし尿に排せつされる感染症の患者(病原体の保有者を含む。)の有無に関して、行うものとする。