食品衛生法の改正とハサップに沿った衛生管理について
食品等事業者の検便に係る扱いが拡大されました。
令和3年6月の食品衛生法の改正に伴いハサップに沿った衛生管理制度が本格的に施行されました。
食品営業許可対象施設の見直しとともに届出業種に対しても検便の実施が規定されました。
あわせて、従来、検便の扱いについ定めていた埼玉県の食品衛生法施行細則も廃止されました。
一方、この県規則に規定されていた営業者が行わなければいけない管理運営の基準が、食品衛生法の改正に伴い食品衛生法施行規則の別表第17に、新たに規定されました。
そのため、従来から埼玉県の食品関係事業者に対する検便について扱いを定めていた「埼玉県感染症対策要綱」も令和3年6月1日付けで、改正食品衛生法の対象とされている食品営業許可業種に加えて食品衛生法第57条の届出営業者も対象とされました。
なお、従来からの対象業種、検便の回数及び検査項目については大きな変化はありません。
【食品衛生法施行規則における検便の規定】
食品衛生法の第51条第1項第2号
「厚生労働大臣は、営業の「公衆衛生上必要な措置」について、厚生労働省令で基準を定める。」となっています。
食品衛生法施行規則(厚生労働省令)の第六十六条の二において、 「厚生労働省令で定める基準は、別表第十七のとおりとする。」とされています。
別表第十七
七 食品又は添加物を取り扱う者の衛生管理
イ 食品又は添加物を取り扱う者(以下「食品等取扱者」という。)の健康診断は、食品衛生上の危害の発生の防止に必要な健康状態の把握を目的として行うこと。
ロ 都道府県知事等から食品等取扱者について検便を受けるべき旨の指示があつたときには、食品等取扱者に検便を受けるよう指示すること。
「埼玉県感染症対策要綱」は、食品衛生法の省令第66条の2で定める基準における都道府県知事等からの指示に該当します。
埼玉県感染症対策要綱(抄)
健増第913号 平成11年8月11日、感対第 242 号 令和3年6月1日
(目的)
第1条 この要綱は、感染症の予防に関し必要かつ具体的な対応を定めるとともに、感染症発生時の対応を定めることにより、感染症の予防及びまん延防止を図り、もって公衆衛生の向上及び県民の健康増進に寄与することを目的とする。なお、結核及び新型インフルエンザ等感染症に関する対応(獣医師等からのり患動物の届出に対する対応を除く。)は別に定める。また、指定感染症については、指定の都度一類感染症から三類感染症に準じた対応を行う。
(生活衛生課及び食品安全課の責務)
第3条 生活衛生課及び食品安全課は、食品、水、飼育動物等が原因となる感染症を未然に防止するため、感染症対策課と連携して食品営業者、給食事業者、水道事業者、動物取扱業者等の指導に努めなければならない。
(保健所の責務)
第5条 保健所は、地域の感染症対策の技術的専門機関として、地域住民及び市町村等関係機関に対し情報の提供を行い、技術的な助言及び指導に当たらなければならない。
2 保健所は、感染症対策の地域拠点機関として、感染症発生時における原因究明、まん延防止並びに健康相談及び指導を行わなければならない。
第2章 平常時対策
(感染症の予防に関する普及啓発)
第10条 保健所長及び感染症対策課長は、感染症の予防に関する普及啓発に努めるものとする。
(食品営業者等に対する指導等)
第14条 保健所長は、別表1に掲げる業務の管理者に対し、飲食物の製造、販売、調製又は取扱いの際に飲食物に直接接触する当該従業員等の健康管理に努めるよう指導し、同表に掲げる検査を勧奨するものとする。
2 保健所長は、前項の規定による業務の管理者に対し、検査機関において自主的に検査を受けるよう指導するものとする。
附 則
この要綱は、令和3年6月1日から施行する。
別表1(第14条第1項関係)
検査対象病原体 | 細菌性赤痢 ・ サルモネラ(腸チフス・パラチフス) 腸管出血性大腸菌O157 |

食品衛生法(抄)
【営業の種類】
第54条 都道府県は、公衆衛生に与える影響が著しい営業(食鳥処理の事業を除く。)であつて、政令で定めるものの施設につき、厚生労働省令で定める基準を参酌して、条例で、公衆衛生の見地から必要な基準を定めなければならない。
【営業許可】
第55条 前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
【営業の届け出】
第57条 営業(第54条に規定する営業、公衆衛生に与える影響が少ない営業で政令で定めるもの及び食鳥処理の事業を除く。)を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、その営業所の名称及び所在地その他厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。
食品衛生法施行令(抄)
【営業の指定】
第35条 法第54条の規定により都道府県が施設についての基準を定めるべき営業は、次のとおりとする。

【公衆衛生に与える影響が少ない営業】
第35条の2 法第57条第1項に規定する公衆衛生に与える影響が少ない営業として政令で定めるものは、次のとおりとする。
1 食品又は添加物の輸入をする営業
2 食品又は添加物の貯蔵のみをし、又は運搬のみをする営業
3 容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品又は添加物のうち、冷凍又は冷蔵によらない方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化により食品衛生上の危害の発生のおそれがないものの販売をする営業
4 器具又は容器包装の製造をする営業
5 器具又は容器包装の輸入をし、又は販売をする営業
埼玉県の旧食品衛生法施行細則に規定されていた管理運営基準(国が示した準則通りに作られたもの。営業者が守らなければならない衛生に関する基準)に、検便についての同様の記述がありました。
なお、食中毒が疑われる事例で、保健所が検便の実施を指示することがあります。しかし、これは「保健所が指示する検便の実施」ではなく、行政調査権の発動であり、食品等事業者が通常行うべき一般的衛生管理における「都道府県知事等から食品等取扱者について検便を受けるべき旨の指示」ではありませので、誤解のないようにお願いします。
1.検便の必要性
(1)健康保菌者の有無の確認
健康保菌者とは食中毒菌に感染していても全く症状を示さない人を指します。
健康保菌者は食中毒菌に感染しているため、糞便と共に食中毒菌を排出しています。そのため健康保菌者が食材を取り扱うと食材や料理に食中毒を付着させ、食中毒発生に繋がる可能性が高くなります。また症状を有する保菌者に比べ、自身の健康状態に影響がないため、自覚せずに感染を広めることで、より被害が拡大してしまう傾向があります。
そこで、こうした健康保菌者が調理従事者に含まれていないか確認するために、定期的に検便を実施する必要があります。
なぜ、健康保菌者が増えているのか?
昔と違い、現代は、国民の健康状態が、改善され、病原菌に感染していても症状がでない健康保菌者が増えています。健康に問題が無いと過信してしまい。手洗いなどへの意識が低下したり、衛生管理への注意力が散漫になってしまいます。その方が、触れたり調理した食品で、菌が増殖した場合は、食中毒などの重大な健康被害を発性させることになります。現代社会では、健康保菌者への注意を払うことが重要となっています。
(2)食中毒発生時や食品の苦情に対する安全証明
食中毒事故の原因究明の過程で、食品等事業者として検便を定期的に実施し、その記録を即座に提示することで、事故発生時に従業員が感染していなかったことを客観的に示し、従業員や店舗を守る防衛手段となります。もし検便を行っておらず、記録を提示することができなければ、店舗の衛生管理体制のみならず企業・団体の責任が問われます。こうした意味で検便が果たす役割は大変重要です。
一般社団法人埼玉県食品衛生協会では、埼玉県の指導のもと「衛生管理ノート」を作成し協会員に販売しています。検便の成績書が無くても検便の記録(いつどこで検便を実施したか等)でき、埼玉県が認める公的な証明にもなります。
なぜ、検便の実施を定めていた都道府県の管理運営基準や様々な基準や通知がが廃止されたのか?
食品の製造・加工が多様化し従来の食品分類では一様に扱うことができなくなったことなどから従来許可制であった業種を見直し届け出制に変更し、また、新たな許可業種が設定されました。また、食品分類や業種毎に定めていた管理基準や衛生規範などとの整合性が保てなくなってきたことから、それらが全て廃止されました。
そのため、新たに国が示した大筋の項目について各団体等が「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理手引書」として作成しそれを確認することで基準に代えることとなりました。
この基準は、基本的に2つに分かれており、一般的衛生管理に関する部分と食品等の調理・製造・加工等に関する危害分析を行い特に管理を集中する項目とその管理方法を規定するものです。
検便は、言うまでもなく一般的衛生管理のための重要な要素であることから、食品衛生法施行規則の本文中にはでできませんが、よく見ていただくと別表の基準として検便の実施について規定されています。また、業界がモデルとして示す多くの手引書でその実施が明記されています。 検便を実施しなくて良くなったわけではありません。
2.検便はどのように規定されているのか
検便の実施は、法的な基準に示されているだけではなく、多くの手引書や関係の法令、マニュアルなどに規定されています。
(1)「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」に規定されている検便
業界団体が策定し、厚生労働省が内容を確認した手引書に「検便」が規定されています。
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」のとおり行わないといけないのか?
IV. 保健所による監視指導や罰則等について
(HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化に関するQ&A) より
平 成 3 0 年 8 月 3 1 日 作 成(最 終 改正 : 令和 3年 5 月 31 日 )
問 15 「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」は、どの程度できていればよいのですか。
答 15
1 保健所の食品衛生監視員による「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」の対象となる事業者への監視指導は、業界団体が策定し、厚生労働省が内容を確認した手引書を基に行っています。
2 従って、食品等事業者の方は、まずは手引書の内容をそのまま実施する、又は手引き書の内容を参考に衛生管理計画を作成して実施するなどして、HACCP の考え方を取り入れた衛生管理を実施して下さい。
「法第50条の2第2項の規定に基づき公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守している」とは?
小規模な営業者等が実施すること
小規模営業者等は、業界団体が作成し、厚生労働省が内容を確認した手引書を参考にして以下の1~6の内容を実施していれば、法第50条の2第2項の規定に基づき、「営業者は厚生労働省令に定められた基準(一般衛生管理の基準とHACCPに沿った衛生管理の基準)に従い、公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守している」と見なします。
1.手引書の解説を読み、自分の業種・業態では、何が危害要因となるかを理解し、
2.手引書のひな形を利用して、衛生管理計画と(必要に応じて)手順書を準備し、
3.その内容を従業員に周知し、
4.手引書の記録様式を利用して、衛生管理の実施状況を記録し、
5.手引書で推奨された期間、記録を保存し、
6.記録等を定期的に振り返り、必要に応じて衛生管理計画や手順書の内容を見直す
(厚生労働省ホームページ「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」小規模な営業者等が実施すること ) より
(2)大量調理施設(社員食堂などの集団給食施設等)における調理従事者の検便
「大量調理施設衛生管理マニュアル」
・調理従事者等に月1回以上の検便を受けること
・検便検査には腸管出血大腸菌の検査を含めること
・必要に応じ10月から3月にはノロウイルス検査を含める事が望ましい
(3)学校給食従事者 の検便
「学校給食衛生管理基準」
・検便は、赤痢菌、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌血清型O157、その他必要な細菌等について、毎月2回以上実施すること
(3)水道関連事業者 の検便
水道法施行規則(昭和三十二年厚生省令第四十五号)
(健康診断)
第十六条 法第二十一条第一項の規定により行う定期の健康診断は、おおむね六箇月ごとに、病原体がし尿に排せつされる感染症の患者(病原体の保有者を含む。)の有無に関して、行うものとする。