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ミネラルウォーター類の規格基準の改正について

ミネラルウォーター類の規格基準が、水道水の水質基準が見直されたことを踏まえ、食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(令和7年内閣府告示第105号)により、 改正が行われました。
このたび、食品衛生研究に改正の概要とその考え方などについて、消費者庁の基準審査課の青木様が投稿されました。その概要を下記のとおりまとめました。

食品衛生研究  Vol.75,No.9(2025) 
ミネラルウォーター類の規格基準の改正について 
消費者庁食品衛生基準審査課 青木大輔 
 (はじめに)
 ミネラルウォーター類の規格基準については、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)におけるナチュラルミネラルウォーター等の規格の設定、及びわが国の水道法の水質基準の見直し動向等を踏まえ、逐次改正方式でミネラルウォーター類に係る成分規格の設定を検討することとしている。 
 今般、有機フッ素化合物(PFAS)のうち、ペルフルオ:ロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルメロオクタン酸(PFOA)について、水道水の水質基準が見直されたことを踏まえ、食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件(令和7年内閣府告示第105号)により、 ミネラルウォーター類の規格基準の改正が行われた。 
 
改正の概要 
(経緯) 
ミネラルウォーター類における化学物質等の成分規格の設定等については、2010年(平成22年)に開催された薬事。食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会において、基本方針が了承されている。 
 
ミネラルウォーター類(殺菌・除菌有)の場合  
(規格基準の設定方針) 
ミネラルウォーターは、水のみを原料とするものであり、水道水の代替として摂取される実態があることから、水道法に基づき、水道水の水質基準として人の健康の保護の観点から基準値が設定されている項目については、食品衛生法においても、ミネラルウォーター類の成分規格の項目として検討する。 
(具体的な内容) 
(1) 成分規格項目の選定 
 成分規格を設定する対象の範囲は、健康保護の観点から評価されている項目(健康関連 
項目)のうち水道法の水質基準である項目及び健康関連項目のうち水道法の水質管理目標で 
あり、かつ、WHOの飲料水水質ガイドラインにおいてガイドライン値が設定されている項目とする。 
(2) 基準値の設定 
 健康関連項目の基準値は、水質基準等の設定の考え方に準じて設定することとしている。耐容一日摂取量(TDI)等の閾値が設定される物質については、基本的には、他の食品からの寄与を考慮し、以下の条件で対象物質の1日ばく露量がTDIを超えないような評価値を算出し、基準値とする。 
・人が1日に飲用する水の量:2L 
・人の平均体重:50 kg 
・水経由のばく露割合としてTDIの10% 
 
「ミネラルウォーター類(殺菌・除菌無)」の場合 
(規格基準の設定方針) 
  ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うもののみを対象にした。理由は以下のとおり、ミネラルウォーター類(殺菌・除菌無)の成分規格項目の選定及び基準値の設定については、コーデックスのナチュラルミネラルウォーター規格(以下「NMW規格」という。)に準拠した成分規格項目の選定及び基準値の設定を行うこととしていること。 
 また、 ミネラルウォーター類(殺菌・除菌無)の製造基準において、原水は、NMW規格に準じ、自然に、又は掘削によって地下の帯水層から直接得られる鉱水のみとし、泉源及び採水地点の環境保全を含め、その衛生確保に十分に配慮しなければならないこと、人為的な環境汚染物質を含むものではあつてはならない旨を規定していること。 
 環境省において、水道水の水質基準項目として、PFOS及びPFOAが追加されたこと、一方、NMW規格において、現在、PFOS及びPFOAは設定されていないこと、また、規格を設定しているEUにおいても、ナチユラルミネラルウォーターについては対象外とされていること等を踏まえ、食品衛生法に基づく規格基準としては、ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うものを対象に、PFOS及びPFOAを成分規格として設定した。また、基準値については、水道水の水質基準におけるPFOS及びPFOAの基準値の設定の考え方に準じ、PFOS及びPFOAの合算値として0.00005 mg/1(50 ng/L)とした。 
 なお、パブリックコメントでは、基準値やその設定対象について、ミネラルウォーター類のうち、殺菌又は除菌を行わないもの、ミネラルウォーター類以外の清涼飲料水、食品製造用水に対してPFOS及びPFOAの規格基準の設定についての意見があった。 
 これらを踏まえて、「ミネラルウォーター類のPFOS及びPFOAに係る規格基準」に関するQ&Aを作成し、ウェブサイトに掲載するとともに、基準の解釈やミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うもの以外の清涼飲料水や食品製造用水の対応については、施行通知等で示すこととした。その内容は次に記載するとおりである。 

1 局長通知 
「ミネラルウォーター類におけるPFAS(PFOS及びPFOA)の成分規格の設定に関する食品、添加物等の規格基準の一部改正について」(令和7年6月30日消食基第402号、健生発0630第5号消費者庁次長、厚生労働省健康・生活衛生局長連名通知) 
(要約) 
清涼飲料水のうち、「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行わないもの(容器包装内の二酸化炭素圧力が20℃で98 kPa以上のものを除く。)」の製造基準として規定する、「原水は、人為的な環境汚染物質を含むものであってはならない」(2 清涼飲料水の製造基準(2)個別基準1.c)について、PFOS及びPFOAは、人の健康を損なうおそれのない濃度として、当面の間、「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うもの」のPFOS及びPFOAに係る成分規格の値(0.00005 mg/1)とすることとし、引き続き、泉源の衛生管理について指導をお願いすることとした。 
 
2 課長通知 
「ミネラルウォーター類におけるPFAS(PFOS及びPFOA)の成分規格の設定に関する食品、添加物等の規格基準の一部改正に伴う対応について」(令和7年6月30日消食基第404号、健生食監発0630第1号消費者庁食品衛生基準審査課長、厚生労働省健康・生活衛生局食品監視安全課長連名通知) 
(要約) 
「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行わないものであつて、かつ、容器包装内の二酸化炭素圧力が20℃で98 kPa以上のものの原水」及び水道水以外の食品製造用水(規格基準告示B 食品一般の製造、加工及び調理基準の5の第1欄及び第2欄に定める26項目の規格に適合する水をいう。以下同じ。)については、今回、PFOS及びPFOAに係る成分規格が設定されていないが、環境省で取りまとめられている「PFOS及びPFOAに関する対応の手引き(第2版)」及び「PFASハンドブック」を参考の上、次のとおり食品等事業者に対して指導等をお願いすることとした。 
(1)ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行わないものであって、かつ、容器包装内の二酸化炭素圧力が2 0℃で98 kPa以上のものの原水については、 自主的にPFOS及びPFOAの濃度を管理し、「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うもの」のPFOS及びPFOAに係る成分規格の値(0.00005 mg/1)を参考に可能な範囲で低減措置等の対応を検討することが望ましいこと。 
(2)水道水以外の食品製造用水を使用する食品等事業者においては、 自主的にPFOS及 びPFOAの濃度を管理し、「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うもの」のPFOS及びPFOAに係る成分規格の値(0.00005 mg/1)を参考に可能な範囲で低減措置等の対応を検討することが望ましいこと。 
 
(参考) 
2 諸外国等における飲料水のPFAS規制状況 
 国際的な食品規格であるコーデックス規格においては、現時点で飲料水を含む食品中のPFASの基準値は設定されていない。EUにおいては、人間の消費を目的とした水を対象に、ベル及びポリフルオロアルキル化合物の全物質の合算(PFAS Total)として0.50 μg/L、指定された20種類のPFASの合算(Sum of PFAS)として0.10 μg/Lと設定している。 
 EU加盟国は、PFAS TotalとSum of PFASの片方又は両方を用いることが選択でき、2026年(令和8年)1月12日までに規制値を遵守するための必要な措置を講じなければならないとされている。 
なお、対象とされる水から、責任ある当局からナチユラルミネラルウォーターと認定されたものは適用除外されている。 
 米国においては、飲料水を対象に、PFOSとPFOAそれぞれに対して4.0 ng/Lと設定されているが、規制対象は水道水に限られている。 
 WHOは、飲料水を対象に、暫定ガイドライン値として、PFOSとPFOAそれぞれに対して0.l μg/L、 全てのPFASに対して0.5 μg/Lを提案したが、2023年(令和5年)11月、パブリックコメントを受けて検討が継続されている。 
 国内及び諸外国等における飲料水のPFAS規制状況等については図1に示すとおりである。