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自主検査の成績書の見かた

自主検査の成績書が送られてきたが、どのように活用したらよいか考え方も含め整理しました。
自主検査のQ&Aも参考にしました。

検査した食品の種類によって、成績書の活用方法が異なります。

1 自分の扱っている食品には基準があるのか 
食品には、食品衛生法に基づく規格基準、成分の規格の定められているものと基準や規格が定められていないものに大きく分けることができます。 
例えば、世の中に大量に又は多く流通する食品には、食品添加物の規格基準(使用基準)が存在します。この場合、食品添加物についての検査結果を添加物の基準と比較することができます。 
しかしながら、世の中に存在する多くの食品には規格基準や成分規格は、その設定の目的から決められていません。 
そのため、どのような検査をしたらよいのか、また、検査結果の活用について疑問を呈される方が多くいます。 

2 基準の無い食品については、どのようなっているのか 
「ハサップに沿った衛生管理」が導入される前は、弁当そうざい、漬物、洋生菓子などいくつかの食品群に対して、食品版GMPといわれた「衛生規範」がありました。 
これは、食品の原材料の取扱いから製造工程の管理、最終製品の規格など事細かく決めたものでした。規格基準や成分規格がなくても、これらの食品についてはある程度判断の基準として活用されていました。しかしながら、この規範が対象とする食品群の中に想定していなかった食品が含まれていたり、自由な製造管理方法を取り入れたりすることができない等の不具合が生じていました。また、どのように管理しても決められた目標を達成できない場合などもいくつか見られました。 
食品衛生法の改正に伴い、これらの規範や通知等で規定していた様々な解釈など全て廃止されました。現在は、これらの食品を調理・加工・製造する業種に対しては「ハサップに沿った衛生管理」が適用されることとなりました。  

3 ハサップに沿った衛生管理における「食品の基準」とは 
この「ハサップに沿った衛生管理」においては、衛生管理計画を食品等事業者が自ら作成しその通りに実施していることを記録し、食品が常に「自ら建てた基準」を満たしているかどうかを定期的に「食品の自主検査」により確認することが重要です。そして、その結果を検証して、さらなる衛生管理の向上に努めることとなっています。 
したがって、自分で調理・加工・製造している食品がどのような状況にあるのか、また、どのような状況にあるべきなのかは、自分で決めていかなければならないことになります。 
とはいっても、食品の調理・加工・製造の方法や品質のうち「出来栄え、味や風味等」は独自で判断できますが、食品中に存在する微生物の状況は分かりません。 
そこで、「自主検査」として、埼玉県食品衛生協会検査センターをご利用いただき、 
・自分で調理・加工・製造している食品がどのような状況にあるのか 
・どのような状況にあるべきなのか 
を決めていただくことになります。  

4 具体的な基準の考え方 
あくまで、自主検査なので原材料中に含まれる「微量な有害物質」や「残留農薬・動物用医薬品」などは、輸入時の水際検査や都道府県等による行政検査で排除されているとすると、食品等事業者の施設内での管理状況の確認が重要となってきます。 
一般的に、食品の事故の中で多いものは、「食中毒」です。特に、衛生管理上で注目されるのは「食中毒菌」への対策となってきます。ところが、サルモネラ属菌や腸管出血性大腸菌、カンピロバクターなど食中毒菌は数十種類存在します。それらの細菌に汚染されているかどうかを調べようとすれば、時間とお金がいくらあっても足りません。また、その結果が出る前に食品が食べられなくなってしまします。 
それでは、「自分が作っている食品がどのような状況にあるのか」をどうやって調べるのでしょうか。 
そこで、役に立つのが「指標菌」です。 
指標菌には、一般細菌数、大腸菌群、E.coli(大腸菌)、黄色ブドウ球菌などがあります。 
例えば、世の中に多く存在する規格基準や成分規格の定められていない食品は、どのような性質があるのでしょうか。 
これらの食品は、簡単な調理・加工を行ったままで摂食するもの(未加熱生食品)、調理時に十分加熱して摂食するもの(加熱調理食品)に分類できます。  

5 食品の分類によって指標菌を使い分ける 
未加熱生食品には、一般細菌数、E.coli(大腸菌)の検査を行います。 
加熱調理食品には、一般細菌数、大腸菌群の検査を行います。 
(1)一般細菌数 
食品には、原材料由来、調理中に調理器具や調理人からの汚染が生じます。この汚染の状況は、「一般細菌数の数が多いか少ないか」で判断ができます。 
数が多い場合は、原材料の汚染があったか、調理中の除染の不備や調理従事者からの汚染が疑われます。 
未加熱生食品については、通常の調理・加工等を行い、その一般細菌数の数を把握することで、通常の食品中の微生物の量を把握することができます。もし、いつも通りの食品が、苦情もなく満足のいくものであれば、その結果(一般細菌数)を「自らの基準」とすることができます。 
また、細菌数が季節によって変化することもあります。年に2回程度、調べて結果を比較することも良いでしょう。 
加熱調理食品について、同様に一般細菌数を調べてみましょう。通常、食品に存在する微生物は、加熱調理によりその多くが死滅します。そのため、一般的な細菌培養で調べられる限界の値(300個/g未満)が得られることになります。もし、それよりも多い数の細菌数となった場合でも、食品の出来栄え、風味・味等が優先される場合があるかもしれません。その場合は、最終製品には微生物が少なからず存在することを念頭にして、保管・保存方法を検討し、販売方法に工夫をする必要があります。 
(2)大腸菌と大腸菌群 
同様に、指標菌としての「E.coli(大腸菌)」と「大腸菌群」の使い方について考えてみましょう。 
大腸菌と大腸菌群と似ていますが、指標菌としての取扱いは大きく異なります。 
ア E.coli(大腸菌)とは 
E.coli(大腸菌)は、人の糞便などから由来する特定の細菌のことです。一方、大腸菌群とは、加熱処理で死滅する生化学的性状が似通った微生物の一群を指します。 
そこで、加熱処理を行わない(未加熱生)食品で、素材本来の風味や味、食感などにこだわった食品の検査には、原材料や調理工程で糞便等の汚染が無いことを確認するためにE.coli(大腸菌)の検査を行います。この場合、いくつ菌か居るかどうかではなく、「陰性(いないこと)」を確認する必要があります。もし、検査で大腸菌が居た場合は、検査結果には「陽性(大腸菌に汚染されている。)」と記載されています。 
イ 大腸菌群とは 
一方、加熱調理食品の場合は、加熱調理がちゃんとできているかが重要となってきます。そのため、加熱処理で死滅しやすい大腸菌群の検査を行います。 
この大腸菌群が「陰性」であれば、加熱調理が十分に行えていることの証明になります。 
加熱処理の本来の目的は、一般細菌数の場合と同様に食品中の微生物を死滅させ食品を安全に保つことにあります。 
しかし、サンドイッチや弁当・そうざいなど大腸菌群の存在を把握できても食品の出来栄え、風味・味等が優先される場合には、最終製品の自社基準(大腸菌群「陽性」)として明記することとし、この食品には微生物が少なからず存在することを念頭にして、保管・保存方法を検討し、販売方法に工夫をする必要があります。 
ウ 黄色ブドウ球菌とは 
最後に、指標菌として一般的に用いられる「黄色ブドウ球菌」の検査です。 
黄色ブドウ球菌は、自然界にも存在しますが、食品の調理・加工等において人の手作業が多く介在する場合、人の手指から汚染される菌です。 
この菌は、少なければ問題ありませんが、食品中で増殖し食中毒を起こす毒素を産生する危険な菌です。 
そのため、握り寿司や手作業が多く発生する食品などについては、「陰性」を確認する必要があります。この指標菌については、一般細菌数や大腸菌群のようにその存在を確認するのではなく、自主基準としては「陰性」とする必要があります。 
 

6 おわりに 
このように、法的に規格基準や成分規格のない「普通の食品」に対しても食品の自主検査を活用していただければと思います。 
 なお、食品の安全を確保するという目的には、特定の食材に既知の食中毒菌の存在が把握されている場合などには、「自社基準」として腸炎ビブリオやサルモネラ属菌などの食中毒菌を加えることも重要です。